モスキーノ2020年春夏ミラノ・コレクション

「モスキーノ(MOSCHINO)」は、ジェレミー・スコットの就任以来、パーティーさながらのショーを繰り広げ、刺激的なパロディーやインパクト大のキャラクターを打ち出してミラノのファッションシーンを盛り上げてきた。ただ、先シーズンフォーカスした“クマちゃん”は、普遍的なアイコンなだけに正直インパクト不足は否めず。飽きっぽいファッション業界人が醸し出した空気をジェレミーも察知したのか、今シーズンは会場演出にこれまで以上に力を入れて世界観を作り込み、再びハッピーなモスキーノ・ワールドへ観客を引き込んだ。

舞台は、架空の工事現場とコイン洗車場。“ストリート・クチュール”を標榜する「モスキーノ」にぴったりのシチュエーションだ。大きなコイン洗車機が2台設置され、周辺は工事現場のごとく三角コーンや信号機などが置かれている。標識はよく見ると、「STOP」ではなく「SHOP」だったり、「ハイヒール禁止」の絵表示だったり。工事中を知らせるネオンサインは「EXPECT DELAY」(ショーのスタートが遅れるという意味)、や「CLOTHED FOR CONSTRUCTION」(CLOSEDとCLOTHEDをひっかけている)などとシャレが効いている。

ファーストルックは、今回もノーカラージャケットとスカートのセットアップで、あくまで“クチュール”がベースにあることをアピール。ただし、カラーパレットは道路工事の現場そのものだ。アスファルトのグレーに、危険を知らせるネオンオレンジやイエロー。そこに、反射テープ風の切り替えでアクセントをつける。花柄レースのワンピースもイエロー×オレンジのボーダーで目に刺激的だ。バッグはチェーンがついた三角コーンや黄色いヘルメット、危険を知らせる標識風など。電動工具をチャーム代わりにしたバッグもある。

後半はシーンが切り替わり、ランウエイのコイン洗車機が突然回り始めると、“カーウォッシュ”バーションの新作が登場。容赦なく、勢いよく回るブラシの間をすり抜けるようにモデルたちは歩き、時に踊りだす。着ているのはカラフルなブラシのような黄色い羽根のドレスや、洗剤のパッケージ風ドレスなど。「パワーパフガールズ」のキャラクターも飛び出し、フィナーレに向けてショーはどんどんヒートアップしてゆく。

最後は大量の泡風船が舞い上がるなか、少し表情の固いジェレミーが登場。喝采を受けると笑顔に変わりバックステージへ戻って行った。