ソニーが画期的な消臭機能を持つ繊維 リチウムイオン電池研究で発見

ソニー(SONY)は、消臭機能に優れた画期的な炭素材料「トリポーラス(TRIPOROUS)」の繊維・アパレル向けの用途開発を本格的にスタートする。アパレル物流企業のミツヤコーポレーション(大阪、中辻晶彦・社長)と組み、糸や生地を製品化。2月3~6日にドイツのミュンヘンで開催される世界最大のスポーツ見本市ISPOでブースを出展する。「トリポーラス」はソニーが世界で初めて商品化したリチウムイオン二次電池の高性能化のための研究開発の過程で誕生した、もみ殻を原料にした炭素材料。優れた消臭機能とサステイナビリティーを武器に、アパレル分野での拡大を目指す。

「トリポーラス」は通常の活性炭にあるマイクロ孔(2nm以下)に加え、より大きなメソ孔(2~50nm)とより小さなマクロ孔(約1μm)の3種類の細かい多孔(ポーラス)を持つ。これにより、水質汚染の原因となる有機分子やアレルゲン、酵素などの小さなタンパク質など分子量の大きな物質から有機塩化物や農薬などの低分子化合物まで、高速吸着が可能だという。水や空気の環境浄化や、防臭・消臭・除菌効果を活かせるトイレタリー、化粧品や薬剤、衣類・布製品など幅広い分野での応用が期待され、2014年度には発明協会から「21世紀発明奨励賞」を受賞している。日本では年間200万トン、世界で1億トン以上排出されている余剰バイオマスであるもみ殻を有効活用することで、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)などの社会貢献が期待されている。製品化や量産化にめどが立ったとして、「トリポーラス」の製品化や協業を検討する企業や、基礎・応用開発を行う研究機関などを募集するなど、特許を生かした、幅広いライセンス展開を進めていた。

提携先の一つであるミツヤコーポレーションは物流企業だが布オムツの製造・販売が祖業であることから、消臭製品などを協業で開発する「臭いXラボ(ニオイXラボ)」をスタート。介護消臭スプレー「ナノケア」などを商品化している。「トリポーラス」は紡績糸の原料になる綿(ワタ)をオーミケンシと、糸を紡績メーカー新内外綿と組んで製造。並行して性能評価と特徴の見極め、最終商品化のイメージ訴求のための生地見本作りや製品見本作りを行ってきた。「市販の消臭製品と比べてみたところ、短時間消臭試験と消臭機能持続性試験において大きく上回っている結果が出た。洗濯しても効果が持続する」とミツヤコーポレーションの鈴木利正「ニオイXラボ」室長。まずはアウトドアスポーツ用として提案すべきと判断し、ISPOへの出展を決めた。

これまでカットソーの糸・生地を開発してきたが、今年は布帛用の糸・生地の開発と不織布や中綿ロール、ダウンとの混合などの開発などを行っていく考え。「トリポーラスの性能を正確につかみ、サステイナブルな自社商品の武器として考えられる企業とタッグを組んでいきたい」という。

メイクアップの重鎮オリヴィエ・エショードメゾンが現代のクリエイターにメッセージ

メイクアップ界の重鎮、オリヴィエ・エショードメゾン(Olivier Echaudemaison)77歳。2000年からメイクアップクリエイティブ・ディレクターを務める「ゲラン(GUERLAIN)」では、09年に“唇のためのジュエリー”をコンセプトにした「ルージュ ジェ」を、19年には香水のボトルに着想を得たデザイン性と、天然由来成分97%という肌への優しさや仕上がりが人気のファンデーション「レソンシエル」を生み出すなど、新しい着眼点を持ち続ける鬼才だ。50年以上もの間ビューティ業界の第一線に身を置き続けているオリヴィエ=メイクアップクリエイティブ・ディレクターが、現代のクリエイターに愛のある喝!を贈る。

(オリヴィエ=メイクアップクリエイティブ・ディレクターがのパリコレ特集を手に取る姿を見て)ファッションやメイクのトレンドはストリートからエレガンスに回帰しているようですね。

これらのメイクはエレガンスというより60〜70年代だね。ツイッギー(Twiggy)の時代だ。私にとって退屈なのは、過去からインスピレーションを受けるだけで、クリエイトする流れがないことだ。今は21世紀なのに、20世紀のものが延々とコピーされ続けている。メイクだけじゃなく、ファッションもそうだ。インスピレーションを受けるのは良いのだが、コピーするのは違う。そこが私は非常に残念に思う。

流行は繰り返すといいますが、確かにリバイバル的なトレンドは多いです。

クリエイターはビンテージからインスピレーションを受けているので、どうしてもコピーになってしまうのだろう。しかし、それだけは何かが欠けてしまう。

80年代、私はこれまでになかったものを作ろうとしていた。過去からインスピレーションを受けたわけではなく常に未来を見続けていた。80年代と比べると、さまざまな技術は進歩し、生活そのものが変わり、生きる枠組みすらも変わっている。40年前の日本も今とはずいぶん違うでしょう?暮らし一つとっても、20〜40代クリエイターの両親や祖父母世代の人たちの多くは、畳に座って生活していたはずだ。その時代のトレンドを、本当に今取り入れなければならないのだろうか?

過去のコピーは前進を生まない。パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)がキュビスム(20世紀初頭のフランスで生まれた前衛美術の潮流)を作る前の19世紀は、キュビスムなんて存在していなかった。だからこそ革命だと言われた。でも、ピカソも何かから刺激を受けていたはずだ。インスピレーションを受けるのはいいけれど、それに新しい解釈を加えていかなければならない。

今は創造的な革命が起こりにくい時代なのでしょうか。

いや、いろんなものが速く進むから今の方が簡単だと思う。以前は1週間かかっていたが、新しいネットワークによってパリやモントリオールのことが瞬時に世界中に広がっている。パリの情報はタイムラグなく、日本にも届いているだろう。つまり、大切なのはクリエイター一人一人が頭で考えることだ。先を見据えて考えれば革命は起こせるはずだ。

「ルージュ ジェ」も未来を見据えて作ったものですか?

「ルージュ ジェ」は10年前、21世紀の女性はどういったものを身につけるのだろうと想像して作った。バッグから口紅を取り出すと、次は鏡を探さなければいけないが、大きなバッグだと見つけにくい。そのため、口紅に鏡を付けてしまおうと思った。進化したバージョンはケースの色も豊富だし、口紅のカラーも選ぶ幅がある。ファッションに合わせてカラーを選んで、お気に入りのケースに収められる、アクセサリーのような遊び心を取り入れた。

私が常に考えているのは、今日の女性か未来の女性が必要とするものを作ることだ。その発想は口紅だけではなく、ファンデーションにもいえることで、「レソンシエル」は肌をケアし、保護しながら美しく肌を見せるファンデーションとして開発を進めた。ただ、この製品は革命というより“進化”だね。技術の進化によって作り上げることが可能になった、19年時点の技術を結集した最先端ファンデーション。しかし、このクリエイティブと機能性は、ファンデーションの歴史に刻まれることになるだろう。

老舗メゾンの伝統を生かしながら革新的な製品を作るのは苦労も多そうです。

「ゲラン」は200年近い歴史を持つが、決して過去にとどまっているメゾンではない。最初にリップスティックを作ったのも、初めて合成の香料で香水を作ったのも「ゲラン」だった。歴史があると同時に革新的で近代的なメゾンだ。だから私は約20年前、「ゲラン」がほかにはない特別なメゾンであり続けるために、何かをしようと思ってクリエイティブ・ディレクターになった。

そのため、「ゲラン」の仕事でも過去を振り返ろうと思わなかったし、十何年もアーカイブを見ることを拒否していたんだ(笑)。でもしぶしぶ見た時に、ほかでは見られない宝石のような作品に興奮した。そこで受けたインスピレーションをそのまま形にするのではなく、私なりに再解釈し、未来の女性たちを見据えて作り上げている。

クリエイターに必要な考えは“未来志向”ということですか?

例えば、日本でいうと「ジバンシィ」で一緒に仕事をしていたUDAメイクアップアーティスト。彼は信念と文化的な背景、情熱や、素晴らしいクオリティーを持っていて、彼をまたフランスに連れ戻したいほどだ。それぞれのパーソナリティーがあると思うが、どんな人であれ信念と文化的な背景、情熱、ビジョンは大切。

5年ぶりの来日ですが、日本の印象は変わりましたか?

表参道や銀座、街を歩く人がとてもスタイリッシュ。とても素敵で驚いた。素晴らしいファッションセンスを持っていて、パリの人たちより上をいっていると思う。これは嘘でもお世辞でもないよ(笑)。

日本独自の雰囲気、いろいろなものを混ぜて取り入れていくセンス、才能。例えば、中東やドバイ、アブダビなどでは雑誌を切り取って広告通りのファッションをする人が多いが、日本人は新しいものと古い物、値段の高いものと安いものなど、パリと同じように自分なりにミックスしている。おそらく東京は、今後も世界各国に影響を与えていく場所になるはずだ。

世界40カ国からブランドが集結 「ファッション ワールド 東京 春」

リード エグジビション ジャパンは、「第6回 ファッション ワールド 東京 春」を3月27~29日に東京ビッグサイトで開催する。

同展は世界中からウィメンズやメンズのウエア、バッグからシューズ、アクセサリーが一堂に集まる日本最大級のファッション総合展。6回目を迎える今回は初出展220社を加え、世界40カ国から750社が参加し、秋冬の新作4万9000点を出展する。

日本初上陸のブランドの中でも注目すべきは、メキシコのバッグブランド「ジュールス ドゥウィッジ(JULES DWIJ)」。リサイクルレザーとコルクで作るサステイナブルなバッグはオールハンドメイドで、レーザーカットによる彫刻のような作りも特徴だ。また、アルメニアのアクセサリーブランド「ファッションドラッグ(FASHIONDRUG)」も見逃せない。動物や花、昆虫などをモチーフにしたハンドメイドブローチは全て天然水晶で作られており、遊び心のあふれる独特な世界観。その他にも欧米やアジア、中東など世界各国から最新ブランドが集結する。

60人の新進ブランドの中では、デザインシャツブランドの「キーコ(KEYCO)」に注目だ。受注生産を中心とし、袖を通すだけで絵になるようなデザイン性が高く、かつ飽きのこないシャツを作る。そのほか、ボーダーが印象的な神戸発のアパレルブランド「ボーデ(BODE)」や、世界でも希少な吊り編み機で編み上げたジャケットブランド「チャート(CHART)」など、さまざまな日本の若手デザイナー・新ブランドが出展する。

今季のトレンドを見極めるだけでなく、製品やOEMの選定、バイイングまでできるイベントとなっている。公式ホームページで招待券の申し込みを受け付けており、当日の持参で無料となる。

大人に向けたガーリーな世界観 北欧発「セシル バンセン」が急成長

ふわっとしたエアリーなドレス、花柄のキルティングスカートやお菓子のようなビーズ刺しゅうを施したトップスなど、大人に向けたガーリーな世界観を提案するのがデンマーク・コペンハーゲン発の「セシル バンセン(CECILIE BAHNSEN)」だ。甘くドリーミーな世界観を持ちながらも、大胆に背中を開いたデザインや透け感のある素材を用いた、抜け感のあるスタイルが大人の心をつかんでいる。

スタートから3年半と若いブランドだが、世界に86アカウントの卸先を持ち、日本国内ではドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA以下、DSMG)、伊勢丹新宿本店、ユナイテッドアローズ、トゥモローランド、ビームスなどの有力店で販売。ロンドンの「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」などの大人ガーリー層に並び、日本でもじわじわとファンを増やしている。2017年にはLVMHプライズのファイナリストに選ばれたほか、ショーを発表しているコペンハーゲン・ファッション・ウイーク(以下、CFW)では目玉ブランドの一つで、「セシル バンセン」目当てにウィークを訪れるバイヤーやジャーナリストも多いという。

4月上旬、デザイナーのセシル・バンセンがDSMGのイベント「OPEN HOUSE」に合わせて来日した。イベントでは特別にコレクションの生地を使ったクッションカバーやミニカーテンを販売したなか、店頭に立って顧客と触れ合う時間を過ごした。

どのようにブランドをスタートさせた?

ずっと自分のブランドを持つことを夢見ていたんだけれど、まずは経験を積むことが大切だと思って、コペンハーゲンでファッションを学んだ後、パリの「ジョン・ガリアーノ(JOHN GALLIANO)」でプリントとテキスタイルを担当した。その後、ロンドンでウィメンズウエアの勉強をして、ロンドンの「アーデム(ERDEM)」ではデザインチームで経験を積んだの。そうしてデンマークに帰ってブランドを立ち上げて、軌道に乗ったところ。コペンハーゲンはカジュアルな服を着る人が多いけれど、あえてフェミニンとクチュール的な要素を合わせたユニークな服を作りたいと思ったの。

現在、販売中の19年春夏について教えてほしい。

子どもの頃の思い出や友情が着想源になっているの。幼い頃に友人に “友だちの印”としてプレゼントするビーズで手作りした“フレンドシップ・ブレスレット”(友情のブレスレッド)をイメージして、ビーズ刺しゅうを随所に施したのがポイント。イノセントな白を使いエアリーな印象に遊び心を加えたわ。

「スイコック(SUICOKE)」とのコラボレーションサンダルも発表した。スポーティーなサンダルにビーズ刺しゅうを施した理由は?

フェミニンな中に気軽な雰囲気も必要だと思ったから。ブランドとして靴を出すことも初めてだったし、他のブランドとのコラボレーションも初めてで、いいスタートを切れたと思う。「スイコック」のサンダルはビブラムソールを使った本格的なスポーツサンダルで、とても丈夫で気に入っているの。前にボーイフレンドとハイキングに出かけたときに早速このサンダルを履いていったの。彼には「その靴で大丈夫?」と聞かれたけど(笑)、山道もスイスイ歩くことができたわ。

エアリーなドレスは、ハリのあるコットンでふんわりとしたシルエットを出すなど、生地に触れると驚きがある。素材へのこだわりは?

100%コットンなんだけど、とても軽いでしょう?コットンでこういう形を作れることに誰もが驚くわ。私の大好きなフィルクッペ(カットジャカードの一種)は必ず毎シーズン使っているの。カットした部分が透明になってとてもきれいで気に入っているわ。

生産はどこで行っている?

生地はイタリアやスイスで、サンプルはデンマーク、商品はヨーロッパで作っている。生産工場とはとても緊密に連携していて、私も訪問して一緒に作業をしている。キルティングは全て手縫いで、ビーズも一つ一つ手で刺しゅうしていて、作るには愛情がいるから、素材やその生産国もとても慎重に選んでいるわ。最近パッチワークのドレスを作るプロジェクトをスタートして、今までだったら捨ててしまっていたような切れ端を活用しながら、一つだけのパーソナルな商品を生み出せることが気に入っているところ。今、サステイナビリティーについて考えることが重要だけれど、私の場合は生産の過程で自然にそうなっていると思う。

卸先も増えて急成長しているが、現在ブランドのチームの人数は?

1年前は3人だったけれど、現在は7人にまで増えてとてもうれしく思っているわ。営業や物流、生産チームができて、ここ半年でメンバーが強固になってきたの。これまでは私がデザインと生産の両方を見てきたけれど、今はデザインに集中できるようになったわ。

今後はオリジナルのシューズやバッグなどのアクセサリーも展開していく予定はあるか?

その必要性があると感じているわ。「セシル バンセン」でワードローブが完成するようにしていきたい。今はドレスがメインだけれど、今後はジャケットやアウターなどのアイテムを増やして、シューズやバッグも見せられるようにしていきたい。

白くてピュアな春夏コレクションから一転、最新の19-20年秋冬は黒が基調でダークなイメージに転換したのはなぜ?

春夏がとてもイノセントな雰囲気だから、よりダークで成熟したものにしたかったし、皆の予想を裏切るものを出したいと思ったの。コレクションで描いている女性が自分を見つけて大人になっていくというようなストーリーがあって、映画監督のデヴィッド・リンチ(David Lynch)の映画作品に出てくるような、森の中で迷子になっているような雰囲気を出したかった。あとは、デンマークの冬はとても暗くて寒いから、デザインしているときに私がそういう気分だったのかもしれない。

現在の販売先は?

卸では世界の86アカウントで販売しているわ。デンマーク、イギリス、アメリカ、日本、韓国、中国などでよく売れていて、日本はアメリカに次ぐ2番目に大きなマーケットになっている。最近、オンラインストアもオープンさせたの。将来的には、コペンハーゲンに小さなお店を開きたいと思っている。例えばドレスは6着だけ展示しているような、世界観を伝えるためのお店で、新たなストーリーを伝えるために展示内容をこまめに変えて見せていきたい。でも、いつになるか分からないから、今はまだ夢の段階の話よ(笑)。

現在はCFWで発表を続けているが、他の都市でショーを開くことも考えている?

今のところ、コペンハーゲンでうまくいっているから継続したいと思っているわ。私のコレクションを見るためにわざわざCFWに来てくれる方が多く、その注目度や関心の高さに今でも少し驚いているわ。次の春夏シーズンは8月の開催で、9月上旬に行われるニューヨーク・ファッション・ウイークよりも早い時期にやっているのにと思うと、なおさらね。インスタグラムで掲載した写真の反響もいつも大きくて、皆新作を待ち望んでいると感じる。だからいち早くコレクションを披露できるコペンハーゲンがあっているんだと思う。また、展示会はパリコレ中にも行っていて、バイヤーたちがコレクション画像をチェックした上で内容を把握して見に来てくれるのもメリットね。

コペンハーゲンにはデザイナーを支援するシステムがあるのか?

私はデンマーク・アーツ・カウンシルからアート部門の資金援助を3回受けられたから、とても助かったわ。年2回応募することができて、奨学金もしくは特定のプロジェクトへの資金援助が受けられる仕組みなの。例えば、ランウエイショーを行いたい時に出願できる。本来は、ファッションというよりアート寄りの財団なんだけどね。コペンハーゲンは、パリやロンドンなどと比べてまだファッション都市としては新しいから、若いデザイナーが参加しやすく、費用が比較的安くすむのでショーを開きやすい都市だと思うわ。あとは、アパレル企業や別の投資ファンドから投資を受けようと思えばそれも可能だと思うけれど、私の場合はブランドを立ち上げて3年半だからまだ早いかもしれない。今はブランドの方向性やDNAをしっかりと確立することにフォーカスしているの。将来的にはそういうこともあるかもしれないけれどね。

デザインスクールで教師を務めた経験もあると聞いたが、どのようなことを教えていた?

ブランドを立ち上げた頃は、デンマークのデザインスクールでファッションイラストレーションを教えていたわ。私自身も生徒から学ぶことが多くてとても楽しかったわ。

教師の経験や、実際にブランドを立ち上げてみて、デザイナーの道を志す人へアドバイスはあるか?

2つあるわ。まず、自分のアイデアを信じて、他人が言うことにあまり惑わされないようにすること。2つ目は先輩ブランドで経験を積んで知識を身につけること。学校ではファッションの生産や営業については教えてもらえないので、私は別のブランドで仕事をして学んだことがたくさんあった。ブランドを運営するのは本当に大変だし努力を要することだから、デザインなどのクリエイティブな能力以外にも必要なことを事前に知るのは大切ね。

憧れのデザイナーを挙げるとしたら?

クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)と川久保玲ね。特に1950年代の「バレンシアガ」が大好きで、構築的で透明感のあるドレス、独特なプリントがその時代に特有なものなんだけど、現代でも色あせない美しさがある。2人のクリエイションには時代を超える魅力があると思う。

日本のファッションについてどう思う?デンマークとの違いは?

日本は殻を破った画期的なアイデアを持つデザイナーがたくさんいて、私にとって最もインスパイアされる国の一つ。道を歩いているだけでも、スタイリングや服の着方がユニークな人を多く見かけて、皆と同じ格好をしたがるデンマークの人々よりもファッションに冒険心があると思うわ。デンマークのファッションシーンは規模がとても小さいし、そもそもブランドの数も少なくて、スタイリングのパターンも1~2種類しかないのよ。日本には選択肢がたくさんあって、いろんな影響を受けられるんだと思う。それに日本人からはいつもファッションへの愛情を感じるの。どんな服を作り、どんな服を買い、それをどう着こなすかということにみんな関心やこだわりがあって、誰かが着ている服を見てどのブランドか分かっても、その人らしく着こなしていていいなって思うわ。

3度目の来日と聞いたが、今回はどこを訪れた?

春に来日するのは初めてで、桜を見ることができてとてもうれしかったわ。先日、ずっと行ってみたかった直島と京都に行くこともできたの。直島では3日間あったからアートを見て堪能する時間がたっぷりあったし、静かで美しいところだったわ。京都は豊かな歴史や信じられないぐらい美しい建物があって壮大な街だった。あと、京都で食べた豆腐とスープが本当においしくて、作れるようになりたい。